巨人・大勢、謎の色紙を投稿する

誠司さんありがとうございます

矢野「今日も色紙持ってきてますけど見せません」
ワイ「なんでだよ見せろよ！」

ワイ「色紙ィ～！！誠司さんの色紙ィ～！！」

良県を拠点に活動する久保元延さんだ。キャリア約１７年の３４歳で、アーティスト名はもーちゃん。選手のグラブや手袋の刺繍（ししゅう）をデザインし、それぞれの個性を引き立てている。

「言葉は人生を変えるくらいのパワーを持っていると思うんです。筆を握ることでいろんな人に出会い、チャンスをもらいました」

巨人・岡本和、ＤｅＮＡ・牧、オリックス・山本。携わる選手はビッグネームばかりだ。用具メーカー・ＺＥＴＴとのコラボレーション作品も手掛けるほか、表札や看板の書体もデザイン。野球以外の分野でも才能を発揮している。

かつては確かな実力を持った球児だった。母校は大阪の名門として知られる上宮高。投手だった青年は背番号１を付けて甲子園のマウンドに立つことを夢見ていた。故郷の奈良から越境入学したものの、１年生の時に腰を疲労骨折した影響で道を絶たれた。

野球のない生活は、色のない世界を生きているようだった。沈む心を明るく照らしたのが、偉大な詩人の言葉だ。家の本棚にあった相田みつをの詩集を何気なく手に取り、数々の名言に胸打たれた。「言葉や文字の力ってすごいなって」。気づけば自らも筆を執り、高校３年生になると路上で創作活動を始めた。

巨人のドラフト１位・大勢（関西国際大）には、入寮の際にメッセージを記した木製の板を贈った。事前の対話で選手としての信条を聞き、人柄にふさわしい言葉をしたためた。「今やるべきことをひたむきにやっていけば、その名の通り大勢の人の心を動かしていけるんだ」。ぬくもりが伝わる柔らかい筆文字で、守護神に抜擢（ばってき）されたルーキーの船出に花を添えた。

「選手の活躍を見るのは、自分が活躍するよりもうれしいぐらい。野球人生の続きを見ているようです」。グラブを筆に持ち替えて道を切り開いた久保さんは、シーズンの開幕を心待ちにしている。（鈴木智紘）